ロビン日記

古本屋ロビンの日々を綴っています。

金剛バスが消えるんだって!?

 今朝の日経新聞に、バスの運転手の不足が深刻になるって記事が載っていた。22年時点のバス運転手の平均年齢は53歳。今後大量退職が見込まれて、新規採用では補えないとのこと。日本バス協会の試算では、30年度時点のバス運転手が9万3000人と、約3万6000人足りないとのことらしい。

 

 記事の中には、次のような記載もあった。

 

 ……影響は各地で出ている。大阪府富田林など4市町村でバスを運行する金剛自動車(富田林市)は11日、乗務員不足と利用者減などを理由に12月20日でバス事業を廃止すると発表した。……

 

 地元なんで日経新聞に載る前から、住民の間では話題になっていたね。金剛バスって呼ばれて親しまれている企業だよ。私もちょくちょく利用していた。

 

 バス運転手が不足するよ~って記事の中で紹介されているので、人手不足が廃業の原因のように思われるかも知れないけど、多分そうじゃない。「利用者減」も理由に挙げられているし、多分コッチが主たる原因。私が乗る地域が田舎だということもあるだろうけど、いつ利用してもガラガラだもんね。狭い道を大きな車体のバスで走ってるけど、もっと小さなマイクロバスで十分だろって前から思ってた。乗客がほとんど乗っていないんだから。

 

 ま、だから利用者数減で売上が厳しいところに、運転手も将来的にドンドン抜けていくし、新規採用するにも待遇面で魅力的な条件を提示できないから集まる保証もない。ってことで、このタイミングで廃業を決めたってのが本当のところだと思う。上場企業じゃないので、決算書類とかが公開されているわけじゃないし、あくまで推測でしかないけどね。

 

 けど、そんなに的外れな推論じゃないと思うんだよ。あの利用者数を見たら、「ヤバイ!」てのはマトモな経営者なら絶対に感じるはず。なのに、バスを小型のマイクロバスに替えて燃料費の節減に取り組むとか、旅行会社とコラボして地元の観光名所の案内に特化したバス運行をするとか……そういう生き残りを模索する対応がなかった。まったくそんなアイデアがなかったというのもあるかもしれないけど、資金面での制約の方が大きかったんじゃないかと思うんだよ。

 

 このニュースで我々が学ぶべきこと。これまで上手くいっていたビジネスモデルがダメになった場合、一刻も早くその変化に気づいてできるだけ体力のあるうちにビジネスモデルの変更、改良に注力しなきゃいけないってこと。

 

 人口が減っていくってことは、何十年も前から分かっていたこと。ってことは、利用者が減ることもあるよね~って考えなきゃいけないし、運転手の数も大丈夫かな? てのはもっと前から対応を検討できたはずなんだよ。まぁ~でも、人間、追い込まれて追い込まれてどうしようもなくなって初めて問題に気づくってこともあるし、やむを得ない部分はあるんだけどね。

 

 ただ、企業の社会的責任って点ではその影響は大きいよね。9月に発表して12月に廃業って、あまりに無責任な気がしないでもない。社会インフラを担っているって意識が欠落している気がするね。他の報道を見ると5月に廃業の意向が伝えられ、6月に地元自治体との協議があったそうなんだけど、それにしても1年の猶予期間もないんだからね。

 

 我々古本屋の業界もハッキリ言って斜陽産業だわ。だから廃業者ってのも年々増えている。店主が高齢化して引退したり、死亡したりする例もあるしね。地元で長年親しまれた古書店がヒッソリ店をたたむってのは寂しいものではあるけど、ほとんどの古本屋は個人事業主。未来永劫続いていくことを前提に組織づくりされる法人とは違って、寿命があるのが当然なんだよ。親子何代にもわたって続いている老舗の古書店だと法人化しているところも多いけどね。

 

 それに本好きの人間にとって古本屋が減っていくというのはツライものではあるだろうけど、ほとんどの人間にとって古本屋なんてあってもなくてもいい存在。生活インフラってよりか、趣味のジャンルだからね。それに今ではネット販売って道もある。本好きの人が本を探し求めるのに苦労はしない時代になったんだよ。

 

 けど、バス事業は違う。ネットでバスを運行しても毎日の出勤や通学、ショッピングには利用できないw どれだけIT技術が進歩しても、絶対にリアルな世界で、リアルなバスを運行しないことには成り立たないビジネスだよね?

 

 地元の人間としては、もうちょっと工夫してうまいことできなかったのかって気がしないでもない。けど、抗えない時代の大きな流れなんだったら、「そういうものなんだね~」くらいに受け止めて、今後もこういう事業者が出てくるだろうなってのは覚悟しておかなきゃいけないかもね。

 

 近い将来、AIによる自動運転ってのがもっと一般的に実用化されれば、過疎地でのバス事業ももう少し継続していくことはできるかもしれないけど……さてさて、自動運転の技術が広まるのが先か、事業者の体力が削がれて廃業するのが先か。なかなか難しい問題だね。