ロビン日記

古本屋ロビンの日々を綴っています。

サンクコスト問題を考える

 経営の本などを読んでいると「サンクコスト」なる考え方が出てくるよね。日本語では「埋没費用」と言ったりもする。行動経済学の分野でもこの考え方は出てきて、こちらではさらに深く考察して「サンクコスト効果」なんて用語まである。

 

 今ね、私の住む大阪がまさにこのサンクコストに揺れている。そう、2025年大阪万博。その開催費用が当初見積もりを大幅に上回っていて、しかもどうやらもっともっと費用はかさみそうだと言うんだよ。

 

 まず、私の万博に対するスタンスを示しておく。私は当初、この万博に大いに期待していた。いつだったか覚えていないけれど、大阪万博が決まった時には心から喜んだものだよ。東京に比べて大阪はどうも景気が悪かったからね。これをキッカケに景気が上向いてほしいって願いもあったんだわ。

 

 もちろん1970年ほどの盛り上がりはないとは思っていた。当時はアポロが持ち帰った月の石という目玉展示があったし、まだまだグローバル化の進む前の時代だから、世界から多くの人が集まるってだけでも一大イベントだったはずなんだよ。私の生まれる前だから想像でしかないけどね。

 

 その当時ほどの盛り上がりには欠けるものの、まぁ関西人はこういうイベントが好きだし、けっこう楽しめるはずって思ってたんだわ。そういや、私の中学生時代に行われた花博も、まぁまぁ地元では盛り上がっていたし、私は吹奏楽部の部員として会場内の一角にあるステージで演奏した。ま、思い出深いイベントだったわな。

 

 けど、もういいやって気分が最近は強い。そもそものキッカケは東京五輪かな。あれ、成功したとみんな思ってるのかな? もちろん活躍した日本人選手もいたよ。けど、正直、諸手を挙げて大歓迎って気分にはなれなかったんだわ。やっぱ、コロナ禍の中、行われたってのがどうにもスッキリしなかった。

 

 実は、大学時代の友人が、コロナで死にかけてるんだよね。辛うじて一命は取り留めたけど、今でも階段を上るときに息苦しくなることがあるみたい。何度も緊急事態宣言が出され、連日、コロナでの死者が報道されている中で、どうしても平和の祭典っていうのが意味不明だった。

 

 国内世論も賛否が分かれる中、オリンピックは強行された。今にして思えば、あの東京五輪が、この日本という国へのケチのつき始めだったと思うんだよ。ロゴマークの盗用問題とか、マラソン会場が何で東京じゃないねん!? とか、演出を手掛けたお笑い芸人がナチスドイツのホロコーストを揶揄するようなネタを披露していたとか……。もう、やることなすこと全てが裏目裏目。日本人選手の活躍を願う前に、

 

 もうこれ以上、恥かかないようやめてしまえよ!

 

 って思ってた。

 

 で、今回の大阪万博も、正直そう思ってる。ハッキリ言う。地元大阪でも、そんなに盛り上がってない。だったら、やる意味、なくね?

 

 ここで、そうだそうだ止めちまえ! って過激な意見を言う人がいる一方で、ここでやめたら世界の信頼を失う。今やめるわけにいかない! って人もいる。せっかく、ここまで頑張って来たのに、これまでの努力が無駄になる! そう考える人もいる。

 

 この「これまでの努力」とか費やした予算……これがサンクコスト。で、このサンクコストにこだわって、合理的な判断ができなくなることがあるよと教えるのが行動経済学で言うところのサンクコスト効果。

 

 ……これ、まんま投資の世界の話でもあるよね? 一度買ったが最後、ひたすらガチホ。含み損を抱えても損切りせず、それどころか無限ナンピン……どぉ? 勝てるはずないよね?

 

 損切りするか、ホールドか。ナンピンするか、しないか。こういうのは、これまでの投資額とかによって結論が変わるべきものじゃないはず。将来性があるとその時点で思えるなら、損切りの必要はないし、資金に余裕があればナンピンすればいい。

 

 でも、買った時点では将来性を感じていたけれど、今となっては失望しているって状態なら、選ぶべき選択肢は損切りしかないはずなんだよ。だって将来性ないんだから。これまで何百万その銘柄に投資してきたとか、どれだけの含み損を抱えているかとかは一切関係ない。もう、その企業に将来性を感じられなくなってるなら投資の意味もなくなってるはずなんだよ。

 

 だけど、なかなか損切りができない。これがサンクコスト効果なんだね。ここで損切りすれば、今までの投資資金を無駄にするし、時間も無駄になる。もうちょっとで上がるかも知れない……そんな根拠のない希望によって、さらに傷を広げるってことも多々ある。

 

 まぁ株への投資の場合、損切りしてもこれまでの投資資金全額が無駄になるって可能性は低いけれど、万博をやめるってなったら、これまでの公共事業費、宣伝広告費等がほぼ100%無駄になるだろうね。建設されたパビリオンは何かの会場に今後転用できるかもしれないけど、現段階では何のあてもないわけだから、予算管理上は100%無駄になるって覚悟しておかなきゃならない。

 

 それでも、やめるべき時はやめなきゃいけない。これ以上、傷を広げないために。追加費用があとどれくらいかかるのか。そして、万博を強行開催した場合に、どういった効果があって、それは投入する資金の額と比べてコスパがいいのか。冷静に考えてみるべきじゃないのかな?

 

 地元大阪でさほど盛り上がっておらず、今後さらに大幅な予算オーバーが見込まれ、なおかつパビリオンの建設も会期に間に合うか不明、さらにメキシコなど一部の国で参加を見合わせる動きがある……ってなったら、……これ、……もう、やる意味ある? ホントに万博をやるってのは、費用対効果を考えて合理的な考え? 自分には、そうは思えないんだけどね。