ロビン日記

古本屋ロビンの日々を綴っています。

二重価格問題を考える

 12月10日付の日経新聞1面に、二重価格が広がっているという記事が掲載されていた。動画配信などの有料サービスで、同じ内容のサービスなのに購入方法によって料金が異なるというもの。PCサイト経由で登録した方が、スマホのアプリを利用して登録するより割安になるんだって。

 

 まったく同じサービスなのに、何で登録方法で値段が変わるんだって不思議な気もするかもしれないけど、事業者側の心理としては理解できる面はある。アプリでの決済の場合、アップルやグーグルなどの事業者に手数料を支払うことになるので、販売者の取り分が減ることになるんだよ。だから、その分も見込んで割増料金にしてるってわけ。

 

 PC経由の方が安いですよって告知していればいいけど、通常はそんなことはしない。それに自社サイトでの売上より、スマホアプリでの売上の方が多いって思われるから、アプリでの販売を取りやめるってことも難しい。苦肉の策が、二重価格なんだろうね。けど、やっぱ不公平感は残ると思う。

 

 実は、この二重価格の問題、古書業界にも存在する。コッチは動画配信サービスの二重価格より、もっと深い問題だと思うんだけどね。

 

 たとえば、ある書店が珍しい本を入荷したとする。高値で売れることが見込めて、しかも出したらすぐに売れそう。こんな本を入荷した場合、じゃあどこで販売するかってことを考えるよね。で、店売りや即売会って選択肢もあるかもしれないけど、とりあえずネット販売ってことに決めたとしよう。

 

 じゃあ次は、どこのサイトで販売するか?

 

 これが問題になる。自店のホームページを持ってる店は多いけど、ネット販売には対応していない店も多い。個人点だと集客力に限界があるので、既存のECサイトに手数料を払って利用する方が楽だからね。私も以前はネット販売していたけど、面倒になってヨソのサイトを利用するようになった (^-^;

 

 さて、既存サイトを利用して販売するとしても、販路はたくさんある。ヤフオク!、 Amazon楽天……最近ではメルカリなんかもあるね。それに古書組合に加盟している本屋だけが利用できるサイトとして「日本の古本屋」ってのもある。でね、それぞれ手数料の体系が違うんだよ。

 

 販売する価格帯や在庫の量、さらには扱う商品の内容によって、販売経費は異なってくる。けど、一般的には、同じ売上高をあげたときに書店側の手元に残る金額としては、「日本の古本屋」の方がAmazonより多い。そういうことは言えると思う。つまり、同じ本を同じ値段で売るなら

 

 Amazonで売るより「日本の古本屋」で売った方が儲かる

 

 ってことが言える。

 

 じゃあ何で多くの古本屋はAmazonを利用するのかっていうと、一つには知名度の差ってのが挙げられるだろうね。同じ本でもAmazonの方が集客力があるので売りやすい、ってことがいえると思うんだわ。

 

 要するに、利益率を重視するなら日本の古本屋の方がいいけど、在庫の回転率を重視するならAmazonの方がいいってこと。この両者のメリット、デメリットを比較して古本屋は販売戦略を練るわけだよ。

 

 ところがね、こんなことを考える店が出てくる。

 

 両方で売ったらいいんじゃね?

 

 1冊の本を、「日本の古本屋」で販売するだけでなく、Amazonにも出品するの。さらにはヤフオク! やメルカリでも売るって猛者もいるw 同じタイトルの本を複数持っていて、それぞれに出品するってのではなく、1冊しか在庫がない本を複数のサイトで併売するんだわ。

 

 販売力はAmazonの方があるから、Amazonで売れることの方が多い。けど、たまに「日本の古本屋」で売れたら手数料が安い分お得だよねって発想。で、どこかのサイトで売れたら、急いで他のサイトの出品情報を削除するの。

 

 まぁ何とも図々しい考えだと思うけど、さらにこれをバージョンアップした戦略もあって、Amazonは手数料が高いから販売価格を高めに設定しておこうって考える店も出てくる。各サイトの手数料を考慮した価格設定にしておけば、どこのサイトで売れても店の取り分はしっかり確保できるし、複数のサイトを利用するから集客力の強化も見込めるってアイデアだね。これが古書業界の「二重価格」問題だよ。

 

 でね、不思議なんだけど、Amazonでの販売価格は高いんだから売れるはずがないって思うんだけど、でも実際は「日本の古本屋」より高値を付けていても売れるってことがあるみたい。そもそもの知名度の差が大きいんだろうね。

 

 商売のやり方なんて人それぞれだから、こういう販売方法が悪いとは言えないけど、でも、

 

 ホントにそれ、儲かるか?

 

 ってのは疑問に思ってる。サイトによっては、このような併売を禁止する規定を定めているところもあるし、運営サイドに見つかったら規定違反で出品停止処分を食らうリスクもあると思うんだよ。消費者の信頼を失う行為でもあるよね?

 

 それに、どこかで売れたら、他のサイトの情報を消すって作業、労力の無駄じゃね? って思うんだわ。忙しければその消し込み作業を失念して、後日、既に販売してしまった商品について別の人から注文が入ってトラブルになるってことも考えられる。

 

 私は、こういうトラブルを招くのが嫌だから、どこかのサイトで出品した商品は、別のサイトや即売会で併売するってことは絶対にしない。けど、けっこう組合加盟のお店でも併売しているお店は多いみたいなんだよ。

 

 その証拠に「日本の古本屋」では、在庫ステータスの中に「在庫確認中」って表示がある。販売してるんだから、在庫はあって当然って思うんだけど、実際には注文が入って店中探しまわったけど、本が見つかりませんでした、ごめんなさいってメールを送る店も多い。在庫管理ができていないなんて、恥ずべきことなんだけどね。

 

 だからね、古書業界の二重価格問題については、価格差がどうのこうの以前に、そもそもの問題として、複数サイトでの併売、これを業界モラルとして禁止すべきだと思うんだけどね。現実には、なかなかこの分野での自主規制は難しいみたい。

 

 あっ、ちなみに私も批判してばかりじゃいけないので、正直に告白するけど、二重価格は設定しているよ。ただし、それは複数サイトで併売しての価格差ってことじゃなく、「日本の古本屋」で販売している商品につき、カートボタンを押さずに注文する場合での二重価格。

 

 たとえば電話やメールなどで注文する場合には、別途、事務手数料を請求している。同じ本を購入しても、カートボタンで決済するのと、電話注文するのとでは支払う金額に差が出ることになるんだけど、当店としてはサイトに表示されてる金額は、あくまでネット注文での価格ということにしている。

 

 メールや電話での注文も受け付けるけど、在庫管理が手作業になることで効率も落ちるし、間違いも発生しやすい。極力、カートボタンを押して注文確認画面に入ってから注文してほしいって促してるよ。

 

 ピザを頼むにしても店で買う場合と、デリバリーを頼む場合で金額が違う。そんな感じで、ネット注文とそれ以外の注文では、料金体系が違う。そういうことにしている。文句を言う人もいたけど、大半のお客様にはこの料金体系にご納得いただいているみたいだね。こういう二重価格は、所定のネット注文をされているお客様との公平の観点からも、むしろ認められるべきじゃないかな?